【住宅展示場の次世代マーケティング】比較データ徹底活用術

住宅展示場は、家づくりを検討しているユーザーにとって一度は訪れてみたい場所です。これまで住宅会社にとって展示場は、来場者を取り込み、契約へとつなげるための重要な営業拠点でした。しかし、時代の変化とともにユーザーの行動や価値観も変わり始めています。こうした状況のなかで、従来通りのやり方を続けていてよいのでしょうか。
ユーザーの変化を象徴するものの一つが、さまざまな業種におけるデジタル化への高い親和性です。たとえば、現在では当たり前となったQRコード決済「PayPay」は、2018年を元年として大規模なキャンペーンにより一気に認知が広がりました。当初は利用者数1,000万~1,500万人、市場規模1~2兆円程度でしたが、コロナ禍を契機に急速に普及しました。
2020年には利用者数4,000万人、市場規模5~6兆円へと拡大。2022年にはSuicaなどの電子マネーを上回り、利用者数6,000万人、市場規模9兆円に到達しました。そして2024年の定着期には利用者数7,000万人を超え、市場規模は13~14兆円にまで成長。クレジットカードを含むキャッシュレス決済全体の約10%を占めるまでになっています。このわずか7年ほどの間に、「現金を持ち歩かず、スマートフォンで決済する」という行動は特別なものではなくなり、コンビニやスーパーで日常的に利用されるようになりました。
こうした決済手段の変化は、購買行動にも影響を与えています。オンラインショッピング(EC)市場は、2015年の約11~12兆円から、2025年には27~29兆円規模へと拡大しています。消費者はデジタル上で情報を収集し、比較・検討し、購入まで完結させることに慣れつつあるのです。
目次
他業種に学ぶDX戦略|EC化とデータ活用で変わる購買行動の実態
キャッシュレス決済の普及により、購買形態は大きく変化しました。これまでは店舗に足を運び、商品を見比べながら現金で購入するのが一般的でした。しかし現在では、オンラインで情報収集を行い、比較・検討したうえで商品を選び、クリック一つで自宅まで配送してもらうことができます。一度この利便性に慣れてしまうと、これほど手間のかからない購買方法はないと感じるようになります。
書籍業界では、紙の本をECで購入するだけでなく、電子端末で読むダウンロード販売も約10%を占めています。その結果、実店舗の書店数は2015年の約15,000店から、2025年には約7,800店まで減少しました。本は店舗で立ち読みしながら探すものから、ネット上の書評やレビューを参考に自宅で注文するものへと変化しています。
家電業界では、型番によって商品を特定できるため、価格比較サイトやレビューを参考にオンラインで購入することが一般的になりました。実店舗へ出向く必要性は薄れ、EC利用率は30%を超えています。
衣類・ファッション業界においても同様です。以前は試着せずに購入することに抵抗がありましたが、返品制度の整備により、EC利用率は20~30%に達しています。実物を確認せずに衣服を購入することが、特別な行動ではなくなりつつあります。
これらの業界に共通しているのは、データ活用と顧客誘導の最適化です。ECの普及により、検索履歴、比較履歴、購買履歴など多様なデータを収集できるようになりました。これらを分析することで、ユーザーの志向や市場トレンドを把握し、継続利用の促進や商品開発に活かすことが可能となっています。
かつては担当者の長年の経験や勘、センスに依存していた判断が、客観的なデータとして可視化され、共有できるようになりました。その結果、多くの業界でデータに基づいた新たなセールスプロモーションが展開されています。

住宅業界のDXは進んでいるのか?販促の現状と課題
他業界では、この10年の間にさまざまな変化が起こってきました。では、住宅業界はどうでしょうか。商品や技術の進歩は見られるものの、販促手法については大きな変化があったとは言い難いのが現状です。
現在も主な集客方法は、モデルハウスでの名簿取得、見学予約による顧客獲得、インターネットからの資料請求、紹介特典、現場見学会などのイベント、各種キャンペーンの案内などが中心です。これらの手法は、この10年どころか、モデルハウスが普及して以降、数十年にわたり大きく変わっていません。
一方で、ユーザーは確実に変化しています。個人情報の取得に対して敏感になり、住宅会社と直接接触する前に、ホームページやSNSで情報収集を行うことが主流になりつつあります。
かつては、モデルハウス見学の際に記名を求められることも少なく、比較的自由に見学できました。そのため、多くの来場者が複数のモデルハウスを回り、実際に体験し、話を聞きながら自分なりの家づくりを考えていきました。週末には、玄関に来場者の靴が並ぶ光景が当たり前だったのです。
しかし、新築購入者の減少やコロナ禍の影響もあり、入館時の記名を強く求める住宅会社が増えました。その姿勢が、結果としてユーザーの足を遠のかせている側面も否めません。
本来、時代の変化はプラスに活かすべきものです。しかし現状では、その変化が十分に活用されず、むしろマイナスに作用してしまっている可能性があります。
住宅営業を進化させる4つの転換
住まいは人生の中でも特に高額な買い物です。そのため、単に情報を集めるだけではなく、実際に体感し、納得したうえで購入へと進むプロセスが欠かせません。既製品とは異なり、施工を伴う商品である以上、この体験が不十分であれば「思っていたものと違う」という不満やクレームにつながる可能性もあります。
その役割を担ってきたのが、モデルハウスや分譲地のオープンハウス、現場見学会、工場見学といった“実体験の場”です。これらを通じて住宅という商品を正しく理解してもらい、思い込みや誤解を解消することが重要です。そして、その体験は単なる説明の場ではなく、ユーザーの納得を生み、ファン化し、契約や紹介へとつなげる大きな価値を持っています。
つまり住宅業界はすでに、「体験」という強力な資産を持っているのです。これから問われるのは、その資産をいかに最大限活用するか。そのためのポイントは、次の4つに整理できます。
① 集客の転換
折込チラシ中心 → ウェブ・SNSを活用したデジタル集客へ
これまで不動産の集客は折込広告が中心でした。しかし新聞発行部数は、2000年の約5,371万部から2024年には約2,662万部へと半減しています。到達率の低下は明らかであり、モデルハウスやイベント来場者の減少にも影響していると考えられます。
今後は、ユーザーが日常的に接しているウェブやSNSを活用したデジタル集客へ転換する必要があります。
単に媒体を変えるのではなく、接点の持ち方そのものを変えることが重要です。

②ターゲット視点の転換
来場1組ごとの成否重視 → 長期的な顧客価値重視へ
従来は、来場者を「買う人」と「買わない人」に分け、成約可能性の高い人を優先する傾向がありました。しかし、本当にそれでよいのでしょうか。たとえその場で契約に至らなくても、「◎◎ハウスは良かった」と親族や知人に伝える可能性があります。数年後に再来場することもあれば、紹介につながることもあります。
つまり、来場者の価値は“その日の商談結果”だけでは測れません。
その人が将来もたらす契約や紹介まで含めた長期的な価値で考える必要があります。この考え方をマーケティング用語ではLTV(顧客生涯価値)といいます。来場者本人だけでなく、その周囲や将来の可能性まで含めて捉えることで、営業姿勢やフォローの在り方は大きく変わります。

③ 営業スタイルの転換
説明型営業 → 伴走型営業へ
これまでは、自社商品がいかに優れているか、他社と何が違うのかを説明する営業が中心でした。モデルハウスやイベント会場では、できるだけ多く話し、顧客を取り込むことが重要とされてきました。顧客になるかどうかを早く見極められる人ほど優秀だと評価される風潮もありました。しかし、ターゲットの考え方を見直すのであれば、営業の在り方も変わるはずです。
これから求められるのは、商品を説明する営業ではなく、ユーザーの不安や疑問を解消しながら意思決定を支える営業です。住宅性能や価格、他社比較などの情報は、すでにインターネットで取得できる時代です。対面の場で繰り返し説明すること自体の価値は、以前ほど高くありません。今後は、基本的な商品情報や事例紹介などはデジタルで提供し、対面では家族の価値観を整理し、不安を解消し、決断を後押しする役割に集中することが重要になります。このように、オンラインでの情報提供と対面での支援を組み合わせる営業手法を、OMO(Online Merges with Offline)型営業と呼びます。デジタルとリアルを分断するのではなく、それぞれの強みを活かして統合する考え方です。説明はデジタルで、感情や迷いに寄り添う対応は人が担う。この役割分担が、これからの住宅営業における価値になっていきます。

④データ活用の転換
自社データのみ → 他社も含めた複合的データ活用へ
自社モデルハウスの来場履歴や資料請求データは活用できていても、 ユーザーが他社とどのように比較しているのかまでは把握できていないケースが多いのではないでしょうか。
- どの会社と比較されているのか
- どの順番で見学しているのか
- 自社に来場していない層は何を求めているのか
こうしたデータを把握できなければ、市場全体の中での自社の立ち位置は見えてきません。
さらに、住まいのニーズは新築だけでなく、リフォーム、リノベーション、中古住宅へと多様化しています。これらをどう取り込むかは、データ収集と分析力にかかっています。

これからの理想の住宅営業とは
変化するユーザー層を的確に捉え、現在ある資源を最大限に活用すること。それが、これからの住宅営業に求められる姿です。モデルハウスや見学会といったリアルの強みを活かしながら、データ収集とブランド浸透を同時に実現する仕組みが必要になります。
その有効な手段が、「住まポ」を活用した「スマート見学」です。
スマート見学は、幅広い層のユーザーが気軽に住宅展示場を体験できる環境を整えます。新築検討者だけでなく、リフォームやリノベーション、中古住宅を検討している層の動向も把握できるため、従来は見えなかったニーズの可視化が可能になります。
また、取得したデータを社内で共有・活用することで、継続的なフォローや戦略立案にもつなげることができます。単なる集客ツールではなく、営業・マーケティング・ブランド形成を支える基盤として機能する点が大きな特徴です。
DXの第一歩として、比較的低コストで導入でき、既存の展示場資産を活かしながら始められる「住まポ」。これからの住宅営業を進化させる実践的な選択肢として、検討する価値は十分にあると言えるでしょう。

